bonの暮らし

メンヘラの備忘録

卒業式

突然ですが、わたくし先日寝ていたところ、うなされて起きました。

そして、目があかない状態で、何かしゃべっていました。

その夢の内容を文字に起こしてみたので、よかったら読んでみてください。

但し、わたしが見た夢の話なので、現実味がないだの面白くないだのという苦情は受け付けておりません。わざと、ですます・である調で統一していません。

そして、主人公の一之瀬香ちゃんが話していることは、だいたいわたしが言いたいことと合っています。答辞を読み終わって話は終わってしまいますが、わたしがそこで目が覚めちゃったから仕方ない。

加えて、bonの偏った頭の中身が出ちゃっただけなので、「ああ、こういうやつもいるのね」くらいに思っていただけたら幸いです。二千字近くあるので、お暇なとき、そしてメンタルが強いときに読んでみてください。

スクロールするとはじまります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は卒業式。

卒業生は、わたしを除いて二人しか来なかった。ボイコットだ。

 

三百近くのパイプ椅子にたった三人だけ座るというのは、あまりにも異様な光景だった。担任が私たちに、近くに座れと指示を出した。

 

「ねえ、答辞誰がやんのかな。」

直子が聞いてきた。

「わかんないよ。」

 

 私と直子、大祐は、ボイコットから外されたメンバーである。

 友だちに裏切られたわけではない。直子は天然で、クラスメートの話をちゃんと聞いていなかった。大祐はこの場を単純に楽しんでいる。

 

「答辞、雨宮直子。」

 

 当然だが、直子は焦る。

「何も考えてないよ。」

「いいよ、適当なこと言って来いって。」

 大祐が小声で言う。

 

「えーっと、あのぉ……。今日は、このような場をご用意いただいて、ありがとうございます……。」

 

 在校生と保護者、教員、来賓、みんな落ち着きがない。

 でも、こんなことは予想済みだ。

 直子がなんとか答辞を終え、席に戻ってきた。

「どうだった?」

「どうこうもないっしょ。」

 だって、準備してないんだもん。

 私は微笑んだ。

 

 まだ落ち着きがない会場の体育館で、わたしは一息おいて、立ち上がった。一応、来賓と教員に頭を下げ、ステージに上がった。

 

「こら、勝手なことをするんじゃないよ。」

 禿げ頭の教頭が小声で言った。ほっとけ。

 

「本日は、このような式を挙行していただき、ありがとうございます。先ほどの答辞は、準備不足でした。当たり前ですよね、さっき名指しされたんですから。」

 

 また会場がざわめきだした。

 

「少し、私の話を聞いていただけますか。今から、卒業生がなぜ三人しか参加していないのかを、ご説明します。」

 

「実は、本来ここには、私しかいない予定でした。答辞を読んだ雨宮は天然でここにきてしまい、若林は単純に興味本位でここにきています。

どうして、卒業生が、卒業式に来ないかわかりますか?

戦後、日本では過剰な人口減少により、子どもを沢山産めという暗黙の了解がありました。その子どもたちは、きちんと愛情を受けられたでしょうか。いいえ、そうではありません。親だって、苦労を強いられてきたのです。平等に愛情をささげることは、不可能に近い。その子どもたちが結婚し、子どもを産み、きちんと愛情を捧げられたか。受けてもいない愛情を、子どもに捧げることは無理です。自覚がない限り。

ゆとり教育は失敗だ。大人たちは子どもたちを失敗作のように言いました。子どもたちは勉強がしたかったのに。余裕のない教員が、ゆとりのある教育を?そんなの無理に決まっているでしょう。

親の言いなり、教員の言いなりに生きて、死んでいく。そうして日本は育っていました。しかし、学校に通えない子ども、いじめるいじめられる子ども、みんな子どもは、何かを抱えて生きています。その何か、とは、みなさんが親から、祖父母から、曾祖父母から受け継いだ、「愛情の不足」だ。今ここにいる子どもたちは、とてつもなく重いリュックを、生まれたときから背負わされている。

つまり、日本の教育は失敗だったということです。

私たちが求めているものは、お金じゃなく、ノーベル賞でもなく、心のゆとりです。

いつまで「いい子」でいなきゃいけないんでしょう。いつまで「世間体」を気にするんでしょう。いつになったら、私たちの自由は手に入れられるんでしょうか。

今日ここに来なかった卒業生たちの気持ち、思い、少しでも伝わりましたか?

これだけ話しても、わからないという方がいらっしゃるでしょう。その方々に向けて、もう少しだけ、説明をします。」

 

ガタガタと、椅子から立ち上がる人たちがちらほら。

 

「海で気持ちよく泳いでいた魚は、愛する人との間に子どもを産みました。その子どもたちには、見えないおもりがついていました。でも、親には見えないので、ちゃんと泳ぎなさい、しっかりしなさいと厳しくしつけました。その魚たちがまた子どもを産み、育てました。今度は倍以上のおもりがついています。それも親魚には見えません。教わったように小魚を育て、おもりが重くなっていく。いつの間にか、魚たちは気持ちよく泳ぐことを忘れてしまっていました。どうしてここに生きているんだろう。どうして僕たちはここにいるんだろう。そんなことを考える毎日。

とてつもなく重いリュックを背負って、毎日毎日、苦しみながら生きているんです。

いい加減、私たちを解放してください。

 それが、ここに来ない卒業生の意思です。

 恨みや憎しみは、とてつもなく大きいエネルギーでできています。どうか、まだ恨まれる存在でいてください。卒業生代表、一之瀬香。」